その5

サスケは、イタチの住居をたずねていた。
もう二度と、来るなと言われたがどうしてもイタチに聞きたいことがあったのだ。

戸をノックすると、反応が無い。留守だろうか。
少し迷ったが、意を決してドアノブに手をかける。するとぐるりと回り、戸が開く。

「兄さん…」

声をかけてみるが、反応は無い。留守のようだ。
サスケは部屋の中に入り込む。少し、待たせてもらうことにした。
部屋の中央に座り、改めて兄の部屋を見る。
机と巻物などが置かれている棚以外、何もない。殺風景な兄の部屋。

兄はこの部屋で、何を考え、何を見て生活しているのだろうか。
しばらくぼーっとしていると、眠気が襲ってくる。


どれぐらいの時間がたっただろうか。日がすっかり落ちて、辺りは夜になっていた
知らない間に眠ってしまったようだ。
突然、ガタンという音が玄関で聞こえる。

サスケはハッと起き上がる。玄関に人影が見えるが、暗くてよくわからない。

「誰だ?」

向こうもサスケに気づいたのだろう。驚いて声をあげる。

「お前は、ダンゾウ様の屋敷で会ったイタチの弟だな。」

その言葉にサスケも、ハッと気づく。ダンゾウの家に行った時に側に控えていた部下を思い出す。
目の前に現れた人物も仮面をかぶり、暗部の装束を着ている。あの時の奴か。

だんだん暗闇に目が慣れてくる。
すると、相手が何かを抱えていることがわかる。どうやら、その何かは人のようだ。
意識を失っているのか、びくりともしない。

「ちょっと、手伝ってくれないか?」

仮面の男はサスケにそう、声をかけた。
何事かと近寄っていくと、驚いた。それはイタチだった。仮面の男は意識の無いイタチを抱えていた。

「兄さん!」

思わず、サスケはイタチの体にしがみつく。

「気を失っているだけだ。少し休めば、じきに気が付く。」

「何があった?」

「少し過酷な任務でな。疲れたんだろう。」

サスケは男からイタチを受け取ると、部屋まで運んだ。
布団を敷くのを男に手伝ってもらい、イタチを布団の上に寝かせた。

「俺はまた任務に戻る。イタチを頼む。」

男はそう言って、部屋から出て行った。

サスケは目の前に横たわるイタチの顔を眺めた。
生気のない真っ青な顔をしていた。時折、目のあたりがピクピクと痙攣している。気を失った原因はおそらく、写輪眼の使いすぎだろう。
サスケも写輪眼を使いすぎると、目が明けていられない程の激痛に見舞われ、体が動かなくなった事がある。

だから、そうならないように自分のチャクラの量を計算し、限界まで使わないように気をつけながら戦っている。
サスケでも、それぐらいのことはできる。イタチほどの忍が自分の限界を計算できない訳がない。
おそらく、それすらできない状況でよほど、追い詰められていたのだろう。